(独)産業技術総合研究所と北陸先端科学技術大学院大学、理化学研究所は2月15日、熱を電気に変える自然界の鉱物「テトラヘドライト」の元素の一部をニッケルに置き換えることで高効率の熱電変換材料を実現したと発表した。400℃付近で高い熱電変換性能を示す優れた材料開発に突破口を開く成果で、自動車や工場からの高温排気中に含まれる膨大な熱エネルギーの有効利用に道が開けると期待される。 テトラヘドライトは銅と硫黄、アンチモンからなる鉱物で、従来から熱電変換材料として知られていた。北陸先端大の末國晃一郎助教、小矢野幹夫准教授がまず自然界に存在するテトラヘドライトとほぼ同じ組成の材料を人工的に合成した。 さらに今回、その成果をもとに、産総研の太田道広研究員、山本淳研究グループ長と共同で銅の一部をニッケルに置き換えた新材料を試作、熱電変換効率7%に相当する高い熱電変換効率を示すことを確認した。 この新材料が高い熱電変換効率を発揮する原因を突き止めるため、理研の西堀英治連携センター長らの協力を得て新材料の結晶構造と原子の振動について大型放射光施設を用いて分析した。その結果、テトラヘドライトの特殊な結晶構造が熱伝導を阻害し、そのことが高い熱電変換効率につながっていることなどを突き止めた。 これまで、400℃付近で有望とされる熱電変換材料には鉛など有害元素が多量に含まれており、実用上で大きな障害となっていたが、テトラヘドライトは有害元素を含まず、環境問題の心配は少ないという。さらに熱電変換の高効率化をもたらす結晶構造の特徴も明らかにできたため、高性能熱電変換材料の開発に突破口が開けると期待されている。 研究グループは今後、テトラヘドライトの性能をより向上させるとともに、結晶構造などがよく似た物質にも注目して、より高性能の熱電材料の開発・探索を進める。
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天然のテトラへドライト(提供:産業技術総合研究所・地質標本館所蔵標本) |
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