水中の微量水銀イオンを高感度に検出する新技術
―簡便で高精度なモニタリング可能に
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は2月6日、河川や湖沼に含まれる微量の水銀イオンを、従来の分光法よりも10倍以上高感度で検出できる技術を開発したと発表した。大気汚染物質の計測などに使われている一般的な赤外分光装置で水中の水銀イオンをppt(1兆分の1)レベルで検出でき、簡便で精密なモニタリング調査が期待できるという。
 開発したのは、水銀イオンを選択的に吸着するとともに、水中の水銀イオンを赤外分光法で高感度検出できるようにしたナノ構造を持つ新材料。ナノメートル(ナノは10億分の1)スケールの間隙(溝)を高密度に設けた金の薄膜をシリコン板に乗せた構造になっており、金の表面には水銀イオンと強く選択的に結合する部位を持ったDNA(デオキシリボ核酸)分子をコーティングしてある。
 チップ状のこの材料を河川水や湖水に漬けて水銀イオンを吸着させ、これに赤外線を照射する。赤外分光は、水の影響を受けるため水中の微量物質の計測には向いていないが、ナノメートルスケールの金の間隙構造がこの問題を解決、併せて感度増強にも寄与し、水中の微量水銀の検出・計測が可能になったという。
 湖沼水で計測実験し、市販のフーリエ赤外吸収分光器を用いて水銀イオンの検出限界をpptレベルまで下げられることを確認した。
 水銀の含有量などを規制する「水俣条約」案が1月に国連でまとまり、年内の採択が見込まれている。加盟国は大気や水、土壌への排出削減を義務付けられるため、その監視などに役立ちそうだという。

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表面コーティング材料で覆われた金表面のナノスケール間隙の模式図(提供:物質・材料研究機構)