陽子衝突の際の衝撃力を抑える技術を開発
―パルス中性子源の高出力化に道
:J-PARKセンター

 高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構が共同運営するJ-PARKセンターは1月30日、光速近くまで加速した陽子を標的の水銀に衝突させた際に発生する強い衝撃力を低減させる技術を開発したと発表した。この技術を用いると衝撃力による水銀容器の損傷を避けられるため、水銀の原子核破砕で得られるパルス中性子の大強度・高出力化が期待できるという。
 大強度陽子加速器施設(J-PARK:ジェーパーク)の物質・生命科学実験施設には、陽子ビームを当てて水銀の原子核をバラバラに破砕する反応で強力なパルス状中性子ビームを生み出すパルス中性子源がある。この中性子ビームの強度を上げれば上げるほど物質科学や生命科学の先進的研究が行えるため、中性子源の高出力化が求められているが、標的の水銀に大強度の陽子を衝突させると強い圧力波が発生し、その衝撃力は硬い金属製の標的容器を損傷させてしまう。このため、その解決が課題になっていた。
 J-PARKセンターの研究チームは、国内外の研究機関と協力し、ヘリウムガスのマイクロバブルを水銀に混合すると衝撃力を低減できることを見出し、今回、水銀中でマイクロバブルを大量生成できる気泡生成器を開発、これを搭載した水銀標的を製作した。実験の結果、マイクロバブルによる衝撃力低減の効果が実証できたという。
 パルス中性子源の高出力化に道を開く今回の成果は、物質・生命科学研究に大きな進展をもたらすことが期待できるとしている。

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水銀標的と内部構造。水銀標的内には水銀が秒速約1mで流れていて、強力なパルス陽子ビームと水銀の原子核反応で大量の中性子を作り出す(提供:J-PARKセンター)