(独)産業技術総合研究所と(独)理化学研究所は1月30日、「水銀系銅酸化物」と呼ばれる銅の酸化物に15万気圧の超高圧をかけたところ、絶対温度153K(マイナス120℃)で電気抵抗がゼロの超電導状態になった、と発表した。
これまでに世界で計測された電気抵抗がゼロになる温度(超電導転移温度)の最高は、135K(マイナス138℃)で、今回の記録はそれより18℃も高く、世界最高の超電導転移温度を実測したことになる。
銅酸化物系の高温超電導体が発見されたのは、1986年。超電導転移温度を一気に液体窒素温度(77K、マイナス196℃)以上にまで引き上げたことで高温超電導研究ブームが世界で巻き起こり、今回と同じ系統の「Hg-1223」という水銀系銅酸化物が1993年に発見されて超電導転移温度は135Kにまで上がった。
Hg-1223は、圧力の増加とともに超電導転移温度が上昇する傾向にあるという報告はあったが、実験が困難なため実際にどの温度で超電導が起きているのかが分からなかった。
産総研と理研は、質の高いHg-1223多結晶試料の高圧合成と、その試料の超高圧下での電気抵抗測定の両方に「キュービックアンビル型」と呼ばれる上下左右前後の6方向から均等に圧縮する圧力発生装置を使い15万気圧の超高圧をかけて超電導転移温度のアップを実測したもの。
産総研は、「今後さらに銅酸化物高温超電導体がどこまで高い超電導転移温度を実現できるか明らかにし、より高い転移温度を実現する新物質開発の可能性を追求していく」としている。
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キュービックアンビル型圧力下物性測定装置の圧力発生部分(提供:産業技術総合研究所) |
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