LPGカセットボンベ1本で24時間発電
―持ち運びのできる燃料電池を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月28日、市販の液化天然ガス(LPG)カセットボンベを使って簡単に利用できる携帯型燃料電池システムを開発したと発表した。使用できる燃料が限られていた固体酸化物形燃料電池(SOFC)にナノ技術を応用した新材料などを採用、LPGなど運搬が容易な炭化水素燃料を直接利用できるようにした。ボンベ1本で24時間発電可能で、災害・非常時の非常用電源のほか、アウトドアや次世代自動車用電源への応用を期待している。
 試作したシステムは、片手で簡単に持ち運べるハンドバッグ程度の大きさ。家庭用のカセットコンロに使われるボンベを1本セットすれば、起動時にも外部電源を必要とせず約2分以内に作動温度400℃に達して直流5Vの電源が得られるという。
 SOFCは、燃料と酸素を反応させる電解質としてセラミックスを用いるが、LPGを燃料として使おうとすると主成分のブタンが熱分解を起こし、燃料側にある負電極に炭素が析出して急速に劣化するという問題があった。このため燃料を酸素と反応させる前に、高価な貴金属触媒を用いた外部改質器で改質する必要があった。
 新しく開発したのは、セラミックスを細長く加工したマイクロチューブ型SOFCを組み込んだシステム。さらに、ナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの酸化セリウム粒子を付けることで炭素析出が防げるようにした電極を採用した。このため、外部改質器で燃料を改質する必要がなくなり、耐久性を損なうことなくLPGを直接燃料として使えるようになったほか、システム全体の小型化も実現できた。
 産総研は今後さらに、発電性能や耐久性の向上に取り組んで携帯型燃料電池システムの実用化を目指したいとしている。

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産総研が開発した燃料電池システム。片手で持ち運びが可能だ(提供:産業技術総合研究所)