核酸医薬の効果をナノ粒子で増強する技術を開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は7月24日、次世代のバイオ医薬として期待されている核酸医薬の効果をナノ粒子によって増強する技術を開発したと発表した。
 核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)が十数個から数十個鎖状につながった構造の薬。病気の原因分子だけにピンポイントで作用するのが特徴で、「分子標的薬」ともいわれ、米国では臨床試験が始まっている。
 新技術は、大きさがnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルのシリコン(ケイ素)ナノ粒子の周囲に米国で臨床試験の段階にある核酸医薬「CpG ODN」を結びつけて同医薬の効果を高めることに成功したもの。
 CpG ODNは、体内に入ると細菌やウイルスの侵入とみなされ、それを迎え撃つインターフェロン(ウイルス抑制因子)などが体内で誘導され免疫が活性化されるという仕組みで、インターフェロンを誘導するタイプと、インターロイキン6という物質を誘導して多くの抗体を作り出すタイプの2タイプがある。
 物材機構は、インターロイキン6を誘導するタイプのCpG ODNを超微細なシリコンナノ粒子の周りに結びつける方法として、[1]髪の毛が生えるように結合させる方法[2]毛糸を巻くように結合させる方法―の2つの方式を開発、その2つの異なる方法でそれぞれシリコンナノ粒子と結合させたCpG ODNを混ぜて使用すると、インターロイキン6だけでなくインターフェロンも同時に誘導できることを発見した。同機構は「2つ(インターロイキン6とインターフェロン)を同時に高いレベルで活性化させることに成功したのは世界でも初めて」といっている。
 人体の免疫作用を十分に活性化させるためには、インターフェロンとインターロイキン6の2つを同時に誘導させることが効果的。しかし、CpG ODNは、2つのタイプを併用しても両方を誘導することはできず、インターロイキン6だけしか誘導されないという問題を抱えている。今回の成果は、その問題解決の突破口になることが期待される。

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