(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月4日、液化天然ガス(LNG)を燃料に用いるロケットエンジン、「LNGエンジン」の研究開発状況を宇宙開発委員会に報告した。「汎用性のあるLNGエンジンの実現に向けた基盤技術の確立を目指した研究開発を進め、目標を達成した。今後は国際的な優位性を確固たるものにするための基礎的研究を実施する」としている。
現在の日本の主力ロケットH-ⅡAは、液体酸素を酸化剤、液体水素を燃料に用いているのに対し、LNGエンジンの推進系は、液体酸素と液体天然ガスの組み合わせからなる。水素推進系は、燃焼ガスがクリーンで性能(比推力)が最も高いといった特徴があり、LNG推進系は、これに比べて性能は劣るが、[1]宇宙空間で蒸発しにくく、宇宙で長期間運用する惑星探査機や軌道間輸送機に適する[2]爆発の危険性が低く、安全性に優れる[3]燃料が安価で、打ち上げ経費を抑えられる[4]燃料タンクを小型化できる、などの特徴を持つ。
日本は2002年から官民共同でLNGエンジンを搭載するGXロケットの開発に取り組んできたが、開発は思ったような進捗が見られず、政府は2009年12月に開発中止を判断。しかし、LNGエンジンの可能性は追求することとし、2010年度から「汎用性のあるLNGエンジンの実現に向けた基盤技術の確立」を目指した研究開発に取り組んでいた。
中止までの間に開発した推力10t級のエンジンから、LNG推進系の利用拡大が期待できる3~4t級に小推力化したエンジンを設計・試作。大気圧燃焼試験、高空燃焼試験を実施したところ、エンジンは良好に作動、小型化につながるエンジンの高圧燃焼化にメドがつき、LNG推進系技術の汎用性(用途多様化の可能性)を確認できたという。また、高性能化、高機能化の研究や宇宙空間を模擬した環境での試験などを行い、燃焼効率96%と、開発着手時の目標94%を上回ったほか、米航空宇宙局(NASA)のLNGエンジン以上の性能をみせるなど所期の成果が得られ、基盤技術を確立できたとしている。
JAXAでは今後、このエンジン技術に関する日本の優位性の維持を目指し、設計技術の向上に向けた研究などに取り組むとしている
No.2012-27
2012年7月2日~2012年7月8日