(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は5月10日、同機構の九州沖縄農業研究センターが、福岡県農業総合試験場筑後分場、佐賀県農業試験研究センター、公益財団法人日本植物調節剤研究協会との共同研究により、除草剤に対する抵抗性を持ち、麦作の支障となるイネ科の強害雑草の「スズメノテッポウ」を効果的に防除できる総合防除技術を開発したと発表した。
九州北部では、除草剤が効かなくなったスズメノテッポウが異常に繁茂するほ場が増えている。そうしたほ場では、麦類の収量は大きく減り、品質も低下することから、栽培途中で管理を放棄する農家や、翌年の麦類の作付けを断念する農家も出ており、麦類の安定生産を阻害する大きな要因になっている。
新しい土壌処理除草剤も開発・販売されているが、スズメノテッポウがまん延したほ場では、除草剤を変更しただけでは十分な防除は難しい状態になっている。
今回の共同研究では、スズメノテッポウの発生量を減らす方法として、除草剤の効果的利用でスズメノテッポウを防除し、浅耕播種や不耕起播種という播種技術とを組み合わせることによって効果のある総合防除法を開発した。
この技術は、水稲収穫後から麦類を播種するまでの間に、土壌表層の発芽したスズメノテッポウを「非選択型除草剤」(ほとんどの植物にダメージを与える除草剤)で防除し、種子を少ない状態にしたあと、下層にある種子を表層に移動させないように、5cm程度に浅く耕起して麦を播く。あるいは専用の播種機を使い、耕起しないで麦を播種、ともに土壌処理剤を使うなどすれば、その後のスズメノテッポウの発生量を減らすことができるという。
土中のスズメノテッポウの種子の増減変化をモデルで検証したところ、この技術を導入するとスズメノテッポウを長期的に低密度で管理できることが分かった。また、まん延の激しいほ場でも、麦を播種したり大豆作を導入したりすると、より速やかに低密度に管理できることが分かった。
新しい防除技術の導入により、麦類の収量と品質を低下させることなく、スズメノテッポウを効果的に防除でき、麦類の安定高品質生産への貢献が期待される。
No.2012-19
2012年5月7日~2012年5月13日