高エネルギー加速器研究機構は5月7日、(独)日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、広島大学、東京大学、英国ケンブリッジ大学と共同で、希土類金属(レアアースメタル)の新水素化物を発見、その結晶構造を解明したと発表した。
水素は、次世代のクリーンエネルギーのホープとして期待されている。その水素を安全かつ大量に貯蔵する手段として注目されているのが金属に水素を結びつけ水素化物の形で蓄え、必要な時に分解して水素を取り出し利用するという方法。中でも希土類金属は、水素との親和性が極めて高く、水素を多量に吸収することが知られている。
今回の成果は、これまで希土類金属では報告されていなかった「岩塩構造(NaCl構造)」という結晶構造を持つ水素化物の存在を世界で初めて観測したもの。
実験は、陽子加速器施設「J-PARC」の中性子線と大型放射光施設「SPring-8」の放射光X線を使って10万気圧を超す高圧力下で行われ、希土類金属の1種であるランタン1原子と水素1原子が結びついた「1水素化物」と呼ばれる岩塩構造の水素化物が存在することを発見した。
希土類金属の水素化物は、金属原子と水素原子が1対2となる2水素化物か、1対3の3水素化物になり、1対1の1水素化物は存在しないと、これまではみられていただけに、その定説をくつがえしたことになる。
同機構は、1水素化物の希土類金属と水素の結合状態を調べ、2水素化物、3水素化物の結合状態と比較して水素と希土類金属の相互作用を解明することで、さらに高濃度の水素を吸収する希土類合金の開発指針が得られるものとみている。
No.2012-19
2012年5月7日~2012年5月13日