(独)物質・材料研究機構は12月10日、高濃度の高分子をわずか数秒の内にサイズ分けするナノフィルターになるシリカ(二酸化シリコン)のナノチューブを陽極アルミナ膜(AAM)と呼ばれる酸化アルミニウム薄膜に垂直に開いた細孔(チャネル)内部に作ることに成功したと発表した。
ナノフィルターは、nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーの物質を分離することができるフィルターのこと。新開発のナノチューブは、そのナノフィルターに応用できるチューブ状の安定した細孔組織を作る方法として好適という。
タンパク質のような高分子を均質なグループや均一サイズに分類することは、生物製剤や薬剤分野で極めて重要な作業となっている。
今回、同機構の研究グループは、直径200nm、厚さ60 μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の均一な細孔が規則的に空いたAAMを用いて、その細孔内に入口直径5nm、内空部分長12 nmのシリカナノチューブを作製する手法を開発。さらに、シリカ表面に共有結合するカップリング剤を用いて細孔チャンネルに多機能表面被覆を生成させ、ナノチューブ間に隙間を生じることなく強固な連続構造体を実現した。
このチューブをナノフィルターとした試験では、分子サイズが5nm以下のタンパク質がわずか数秒で細孔を通過したのに対し、それより分子サイズの大きいものはチャンネル通過により長い時間を要した。この試験と同条件で行った細孔直径25~150nmの市販フィルターでのタンパク質分離試験では、分離に数時間かかった。これは、シリカナノチューブの開口部がサイズによる分子ふるい分けの鍵であることを示している。
このシリカナノチューブフィルターは、複数回再使用してもタンパク質に対して高いろ過効率を示し、1年保管してもろ過効率の低下は見られなかった。
同機構は、品質保持期間、長期安定性、分離効率、再利用性など、ろ過膜に求められる特性を十分に持っていることが実証されたといっている。
No.2010-48
2010年12月6日~2010年12月12日