(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月8日、金星探査機「あかつき」を金星周回軌道に乗せるため、日本時間(以下、時間は全て日本時間)12月7日朝に軌道制御エンジンを逆噴射させたが金星周回軌道に乗せるのに失敗したと発表した。 「あかつき」は現在、惑星のように太陽の周りを回る軌道に乗っているが、この周回飛行が続けば平成28年12月から翌年1月にかけて金星最接近の機会が2回あり、JAXAは約6年後に回って来る機会に金星軌道投入に再挑戦したいとしている。 JAXAは、宇宙科学研究所の小野田淳次郎所長を長とする調査・対策チームを設置して失敗原因を究明しているが、7日午前8時49分の逆噴射開始は計画通り行われたものの、最低9分20秒は必要な逆噴射が2~3分でストップ、「あかつき」は金星の重力に捕まるほどには減速できずに通過してしまった。これまでの分析で、逆噴射開始2分23秒後に機体が強い衝撃を受けて5秒に1回転の速度で回転を始めたので非常事態モードに切り替わり、逆噴射が中断されたと分かった。強い衝撃の原因などは引き続き調査中。 6年後の再挑戦には、軌道制御エンジンの燃料残量やバッテリーなどが問題となる。エンジン燃料は、今回の逆噴射が短時間で中断、全量の2~3割しか使っていないので、セラミック噴射口を採用した国産エンジンが損傷していなければ、金星周回軌道投入再挑戦時の逆噴射は可能とみられている。 また、バッテリーの設計寿命は4年だが、翼の様に広げた2枚の太陽電池を使うなど、電気の使い方を工夫し、劣化に繋がるバッテリー放充電も最低限に抑え、次回の金星最接近まで何とか持たせたいという。 「あかつき」は、日本初の金星探査機で平成22年5月にJAXAの種子島宇宙センター(鹿児島、種子島)から「H-ⅡA」ロケット17号機で打ち上げられた。打ち上げ時重量は、約500kg。計画では、約300~80,000kmの金星周回軌道を約30時間で1周しながら、6台の観測機器で金星大気の謎解明のため、金星全体の気象現象や宇宙空間へ逃げ出す大気の観測、雲のクローズアップ撮影など行う計画だった。日本の惑星探査機が目的の惑星周回軌道入りに失敗したのは平成15年12月の火星探査機「のぞみ」に続いて2回目。 詳しくはこちら |  |
金星探査機「あかつき」が撮った金星の写真。「あかつき」は6年後、もう一度金星軌道投入に挑む予定(提供:宇宙航空研究開発機構) |
|