(独)物質・材料研究機構は10月22日、低消費電力で駆動可能な高性能光半導体デバイスの実現につながる実験に北海道大学と共同で成功したと発表した。ガリウムひ素半導体に大きさ数10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の半導体微粒子「量子ドット」を形成、その極微の空間内に複数の電子を閉じ込めてその電子状態を制御することに成功したもの。
ナノ空間における電子間の相互作用強度の制御に道を開く成果で、将来の高性能光スイッチング素子や量子コンピューターなどへの応用が期待される。
実験に用いた量子ドットは、同機構の独自技術である「液滴エピタキシー法」と呼ぶ手法を使ってガリウムひ素半導体で作成した。量子ドットの中では、マイナスの電荷を持つ電子やプラスの正孔はペアになった励起子、または電子や正孔がさらに1個余分にくっついたイオン化励起子と呼ぶ状態で存在する。
今回の実験では、量子ドットから発せられる光信号を計測することにより、そのイオン化励起子の観測に成功した。イオン化励起子の安定化エネルギーは、10ミリ電子ボルトで、従来の同種材料による量子井戸構造に比べて5倍以上の値を示すことが分かった。この成果は、安定で低消費電力の光半導体デバイスの開発につながるという。
No.2010-41
2010年10月18日~2010年10月24日