極微世界の超高速現象観察できる顕微鏡を開発
:筑波大学/科学技術振興機構

 筑波大学と科学技術振興機構は10月21日、極微世界の超高速現象を観察できる新しい顕微鏡を開発したと発表した。同大学大学院数理物質科学研究科の重川秀実教授らが走査型トンネル顕微鏡(STM)技術と超短パルスレーザーを組み合わせ開発したもので、半導体素子のnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールの超微細な領域の電子の振る舞いなどをフェムト秒(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)単位で調べることができる。
 半導体素子の加工寸法は、nmスケール領域に到達している。こうした微細化・高速化が高度に進んだ半導体素子の物理・特性を正しく評価し新しい機能を生み出していくには、半導体に添加するドーパント(不純物原子)やキャリア(半導体中の電子やホール)の状態をnmスケールの細かさで観察し、フェムト秒の単位で計測する技術が必要といわれている。新顕微鏡は、それを可能にしたもので、「ナノスケール科学の新たな展開と、ナノデバイス開発で重要な役割を担うことが期待される」と同大学はいっている。
 2つの導体を1nm程度にまで近づけて1V程度の電圧をかけると、2つの導体が接触していないにもかかわらず電流が流れる。この電流をトンネル電流という。STMは、流れるトンネル電流から表面の原子レベルの電子状態、構造などを観測する装置。
 新顕微鏡は、STMにパルス幅がフェムト秒の超短パルスレーザーを組み合わせることで極微世界の超高速現象を観察できる顕微鏡を世界で初めて作り上げ、フェムト秒単位で起きる状態の変化を1nmレベルの細かさで観察できるようにした。
 この研究成果は、10月24日(英国時間)に英国の科学雑誌「ネイチャー・フォトニクス」のオンライン速報版に掲載された。

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