骨髄移植で最も危険な合併症の鍵分子を発見、新しい予防・治療法の開発に成功
:筑波大学

 筑波大学は10月19日、白血病などに対する治療法である骨髄移植において最も危険な合併症である急性移植片対宿主病(GVHD)の発症の鍵となる分子を発見し、この分子の働きを抑えることで、移植片対宿主病の効果的な予防・治療法を開発することに成功したと発表した。
 骨髄移植は、血縁者や骨髄バンクからHLA(ヒト白血球型抗原)の一致した人を探し出してドナー(提供者)とし、患者にその骨髄細胞を全身放射線や大量の抗がん剤を投与した後、移植する治療法で、医学・医療の進歩により世界中で毎年数万人の患者がこの治療を受けていると推定され、我が国でも毎年2千例を超えている。
 しかし、骨髄移植における最も重い合併症として、GVHDがあり、移植の成否を左右するばかりでなく、生命にも直接影響している。
 これまで、GVHDの発症のメカニズムは、十分に解明されておらず、発症メカニズムに基づいた特異的な予防法や治療法はなかった。また、GVHD を予防するためにHLAの完全に一致したドナーが必要だが、血縁者以外には数十万人に1人程度しか存在しないため、ドナー不足は深刻な問題になっている。
 研究グループは、今回の研究でキラーリンパ球と呼ばれるリンパ球の細胞表面に発現する免疫受容体分子であるDNAM-1が、GVHDの発症に重要な役割を担うことを世界に先駆けて発見した。
 さらに、野生型マウスとDNAM-1遺伝子を欠損したマウスをドナーとしたGVHD のマウスモデルを作製し、生存率を比較した。その結果、DNAM-1遺伝子を欠損したマウスをドナーとしたGVHDマウスモデルの生存率がはるかに高く、生存期間も長いことから、DNAM-1がGVHDの発症に関与していることが明らかになった。
 また、DNAM-1の働きを抑える抗体を投与すると、GVHDを予防できるばかりでなく、すでに発症したGVHDが劇的に改善することも証明できた。
 これらの研究成果により、今後GVHDの合併症のない安全な骨髄移植療法が可能となり、白血病など血液がんの治療効果の向上につながるものと期待されている。また、ドナー不足解消にもつながる可能性がある。
 この研究成果は、10月11日米国のアカデミー紀要のオンライン版に掲載された。

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