大きさ揃った金などの金属ナノ粒子を合成する手法を開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は7月12日、安定剤や還元剤を使うことなく、精密に大きさが揃った金などの金属ナノ粒子を合成する手法を世界で初めて確立したと発表した。
 金属ナノ粒子は、その特異な物理的・化学的特性から、燃料電池やマイクロエレクトロニクスなど多くの分野で注目を集めている。
 ナノ粒子は、nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズの直径(粒径)を持つ粒子のことで、特性や機能が粒径、形状などによって大きく変わる。このため、粒径の均一なナノ粒子が求められ、多孔性材料が持つnmサイズの孔の中で粒径の揃ったナノ粒子を作る方法が研究されてきた。
 同機構は、「メソポーラス窒化炭素(MCN)」と呼ぶ孔径が厳密に制御された炭素と窒素でできたナノポーラス物質を開発済みで、今回そのMCNの持つnmサイズの孔の中で金ナノ粒子を成長させ、精密に大きさの揃った粒子を作製することに成功した。
 ナノポーラス物質とは、孔の径がnmサイズの多孔性物質のことで、特に孔径が2~50nmの物質をメソポーラス物質といい、今回用いたMCNもその一種。
 MCNを用いて金ナノ粒子を合成する実験の過程で、ナノポーラス内部の窒素と水素からできているアミノ基が、金のナノ粒子を安定化させる安定化剤や、金になる前駆体物質から金を作る還元反応を行う還元剤の役割をしていることを見出した。これにより、外部から化学物質を新たに加えることなく、複雑な操作を行わずに金ナノ粒子を合成することができた。生成した金のナノ粒子は、直径7nmの大きさで、そのサイズはほぼ均一であった。
 合成した金ナノ粒子の触媒機能を調べたところ、医薬品であるプロパルギルアミンという物質の合成の触媒として機能することが確認された。
 また、金ナノ粒子は、MCNのナノ空間内に固定化されているため凝集して活性を失う恐れが全くなく、簡単に洗うだけで、何回でも繰り返してリサイクル利用することができる。
 この作製方法は、とてもシンプルで、様々な種類の金属ナノ粒子を安価に大量生産することができるため、燃料電池の電極など、幅広い産業分野に役立つものと期待される。

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メソポーラス窒化炭素(MCN)のnmサイズの孔の中にできた金のナノ粒子(黒い部分)の電子顕微鏡写真(提供:物質・材料研究機構)