茨城県は3月25日、茨城大学とJ-PARCセンター(大強度陽子加速器施設センター)に委託してJ-PARC(茨城・東海村)内に設置した中性子回折装置「茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)」を使いグルタミン酸など3種類の有機結晶の構造解析に成功したと発表した。
iBIXは、(独)日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で設置・運営するJ-PARCの強力なパルス中性子源に対応した世界初のパルス中性子専用タンパク結晶構造解析装置。新方式の中性子検出器と新開発の結晶解析処理ソフトを備え、測定装置の主要部分のほとんどを茨城県内の中小企業が製作した。
結晶中の原子の位置を調べる結晶構造解析に中性子を使うと、水素原子や水素イオンの位置を容易に見ることができる。iBIXは、結晶から散乱する中性子の回折線を効率的に検出する2次元検出器を14台装備。今回、3種類の有機結晶について構造解析を行い、十分な精度で解析できることを確認した。
今回の測定に要した時間は、3日程度だが、2年後には検出器を30台まで増やし、J-PARCも出力アップする計画なので、平成25年頃には有機結晶で半日程度、タンパク質結晶でも3日ほどで全データを取得して構造解析できる見通しという。
J-PARCの出力がアップされれば、より小さな結晶の測定も可能になり、有機分子・生体高分子研究の大きな戦力になるものと期待される。
No.2010-12
2010年3月22日~2010年3月28日