カーボンナノチューブ使い、薄くて軽い点字ディスプレーを実現
:産業技術総合研究所/アルプス電気/東京大学/慶応大学

 (独)産業技術総合研究所は3月23日、アルプス電気(株)、東京大学、慶応義塾大学と共同で、カーボンナノチューブなどで構成したアクチュエーターを使った薄くて軽い点字ディスプレーの開発に成功したと発表した。
 アクチュエーターは、エネルギーを機械的な仕事に変換する装置。新点字ディスプレーは、カーボンナノチューブとイオン液体からなる「カーボンナノチューブ高分子アクチュエーター」を使って実現した。
 研究グループは、点字6文字を表せる幅3cm、長さ6.5cm、厚さ3mmのディスプレー本体と、携帯電話大のコントロールボックス、電源を一体化したデモンストレーションモデルを作り、実際に視覚障碍者が使って評価する実験を進めている。
 点字は、視覚障害者が単独で読み書きできる唯一の文字。しかし、これまでの点字ディスプレーは、携帯したり機器に付けるには大きくて重すぎる難点があった。そこで、同研究所などの研究グループは、厚生労働省の障害者自立支援機器等研究開発プロジェクトとして、昨年から今回のカーボンナノチューブ高分子アクチュエーターを用いた点字ディスプレー開発を進めていた。
 そのアクチュエーターは、板状で、イオン液体とポリマー(高分子)でできたゼラチン状のゲル電界質を、カーボンナノチューブとイオン液体、高分子バインダーで作った電極2枚で挟んだ構造をしている。これに3V以下の電圧を加えると、陽イオンと陰イオンの移動によってそれまでまっすぐだった板状のアクチュエーターに大きな“反り”が生じ、その反る力で点字を構成するドット(ピン)を押し上げ、指で触れば突起として感じられるようにして点字を形成するという方式。
 この新点字ディスプレーは、薄くて軽く、構造が簡単で、消費電力も少なく、タッチパネルの上に貼る形にして利用することもできる。このため、銀行のATM(現金自動預け払い機)や家電製品などに搭載するといった使い方もできるという。

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新開発の点字ディスプレー(提供:産業技術総合研究所)