高エネルギー加速器研究機構は2月25日、「T2K実験」グループが2月24日午前6時に茨城県東海村の大強度陽子加速器施設(J-PARC)のニュートリノ実験施設で人工的に発生させた素粒子ニュートリノを、約295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある東京大学宇宙線観測所の検出器「スーパーカミオカンデ」に向けて打ち出し、スーパーカミオカンデで初めて検出することに成功したと発表した。
T2K実験とは、東海村のJ-PARCで作りだしたニュートリノビームを295km離れたスーパーカミオカンデで検出する長基線ニュートリノ振動実験のこと。
ニュートリノは、物質を構成する最小の単位である素粒子の一つで、クオークや電子の100万分の1以下の重さしか持たず、電気的に中性という性質を持つ。ニュートリノには、電子型、ミュー型、タウ型の3種類があるが、透過性が非常に高くて観測が難しいことから、反応を捉えるために高感度のセンサーが必要とされている。
T2K実験は、ニュートリノの未知の性質を解明し、物質をつかさどる究極の法則の手がかりを得ることを目指す世界最先端のプロジェクトで、未発見のミュー型から電子型に変化するニュートリノ振動と呼ばれる新しい現象の発見を最大の目標としている。
この実験は、国際的にも注目されており、日本をはじめ、米・英・イタリア・カナダ・韓国・スイス・スペイン・独・仏・ポーランド・ロシアの12カ国から合わせて500人を超える研究者が参加する国際共同実験となっている。日本からは、同機構、東大宇宙線研究所、京都大学など8つの大学や研究機関から約80人が参加している。
T2K実験では、昨年4月に東海村のJ-PARCでニュートリノのビームの初生成に成功し、今年に入ってからニュートリノビームを本格的に神岡に送り始めていた。
今後、T2K実験では、加速器からのビームをさらに増強しながら、スーパーカミオカンデにおいてニュートリノ反応の観測を続け、世界最高感度での新しいタイプのニュートリノ振動の探索などの研究を進めることにしている。
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No.2010-8
2010年2月22日~2010年2月28日