フレキシブルな薄膜太陽電池で光電変換効率15.9%を達成
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月25日、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)から成るフレキシブルな多元系化合物半導体(CIGS)薄膜の太陽電池で光電変換効率15.9%を達成したと発表した。
 表面に金属導線がなく、軽くて曲げられる集積型構造のCIGS太陽電池で10%以上の光電変換効率を得るのは、これまで難しかった。同研究所は、光電変換効率を高める高精度なアルカリ金属添加技術などを新たに開発、今回の成果を得た。
 CIGS太陽電池は、経年変化がなく、長期信頼性に優れ、低コスト化も期待できる薄膜型太陽電池の一つ。従来の薄膜型CIGS太陽電池は、金属箔などの基板1枚ごとに一つの太陽電池が作られ、それを複数枚、導線で繋いだグリッド電極型構造だった。それに対して今回開発のCIGS太陽電池は、1枚のガラス基板上に複数の太陽電池を直列に接続した集積型構造になっている。これまでフレキシブル基板上には、集積型構造の形成が難しい上に、光電変換効率を高める技術に課題があったからである。
 同研究所は、これまで培ってきたレーザーなどを用いたガラス基板向け集積化プロセス技術を進化させ、フレキシブルなセラミックス基板を用いたCIGS太陽電池の集積化に成功した。
 また、CIGS太陽電池では、アルカリ金属添加で光電変換効率を高められることが分っていたが、今回、基板となるケイ酸塩ガラス層の形成条件を変えることで、CIGS層へのアルカリ添加量を精密に制御する手法を確立した。
 同研究所は今回、厚さ300μm(ミクロン、1μmは1000分の1mm)のフレキシブルなセラミックス基板表面に極薄ケイ酸ガラス膜(厚さ0.1μm)を形成してアルカリ金属添加による効率向上を実現した。完成したCIGS太陽電池サブモジュールは、1枚の基板上に17個のセルが直列接続されており、大きさは縦横10cm。
 この研究成果は、3月17日から20日まで東海大学湘南キャンパス(神奈川)で開かれる「第57回応用物理学関係連合講演会」などで発表する。

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新開発のフレキシブルCIGS太陽電池(提供:産業技術総合研究所)