(独)農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所は1月14日、豚ぷんを堆肥化する際に発生する一酸化二窒素(N2O)ガスを、堆肥生産現場で容易に入手できる完熟堆肥を添加することで大幅に削減する技術を開発したと発表した。
一酸化二窒素は、政府が意欲的な削減目標を掲げて排出削減に努めている温室効果ガスの一つで、成層圏のオゾン層に最も大きな影響を及ばす恐れのある破壊物質でもある。農業部門では、特に畜産における家畜のふん尿の堆肥化過程から多くの一酸化二窒素が発生するため、早急な対策が求められているが、これまで有効な抑制手段はなかった。
通常の堆肥化の過程では、初期に有機物が活発に分解されて温度が60ºC以上にまで上昇するが、有機物の分解がほぼ終了して温度が下がってくると、20~30ºCの環境を好む中温性菌であるアンモニア酸化細菌が増殖を始め、タンパク質などの分解で生じたアンモニアを亜硝酸イオンに酸化し始める。
しかし、豚ぷんでは、亜硝酸イオンをさらに硝酸イオンにまで酸化する亜硝酸酸化細菌の増殖が遅れるため、一酸化二窒素を生成する原因物質である亜硝酸イオンが長期間・高濃度に蓄積する場合がある。これが一酸化二窒素の発生量増大の原因とされている。
研究グループは、この対策として、亜硝酸酸化細菌を豊富に含む完熟豚ぷん堆肥を添加すると、亜硝酸イオンが速やかに酸化され、一酸化二窒素の発生量が大幅に減少するのではないかと考えた。完熟堆肥とは、高温発酵期と十分な後熟期(中温発酵期)を経て得られた堆肥のこと。
小規模堆肥化試験で得られた結果では、亜硝酸酸化細菌を含む完熟堆肥を高温発酵期の後で、重量比で1.5~10%添加することにより、一酸化二窒素の発生量を平均で60%前後、最大で80%と著しく削減することができた。亜硝酸酸化細菌は、高温に弱いため、堆肥化の高温発酵が終了した後に添加する。
今後は、実用化を目指して実規模に近い堆肥化実証試験を行うとともに、他の畜種(牛・鶏)のふん堆肥への適応可能性の検討なども予定している。
No.2010-2
2010年1月11日~2010年1月17日