木材の産地を高精度・高信頼度で判別する技術を開発
:森林総合研究所

 (独)森林総合研究所は1月13日、年輪の炭素同位体比を利用して、木材の産地を高精度・高信頼度で判別する技術を世界で初めて開発したと発表した。
 世界中の全ての木材は、その産地に特有な「安定同位体フィンガープリント」と呼ばれる一種の“指紋(フィンガープリント)”を有している。
 安定同位体とは、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子同士の内、放射線を出さないものをいう。例えば、炭素には13Cと12Cの安定同位体が存在する。植物中に含まれる安定同位体の存在比は、産地や生育年に応じて特有で、これらの固有の安定同位体比の組み合わせを「安定同位体フィンガープリント」という。木材は、数十年から数百年の間年輪を形成するので、産地識別に使える情報量が多く、より正確な産地推定が可能になる。
 新開発の方法は、産地が分からない木材(原木丸太)の年輪の炭素同位体比の経年変化のパターンと、産地が明らかな木材のパターンを比較し、産地未知材との類似性が最大になる地点を推定産地とする。木材の産地を誤差100~300kmで判別することが可能という。
 この新開発の木材産地判別法は、「近くに生えている木同士ほど炭素安定同位体比の年変動(時系列)の類似性が高い」という性質を利用しており、実際に米国南西部の木材の産地を高い空間精度・高信頼度で判別できた。
 同研究所では、国内の木材主要産地周辺や、違法伐採が深刻なインドネシアを含む東南アジア産のチーク材についても、年輪の炭素同位体比デ―タベースを構築している。
 木材の産地を高精度で判別する技術の開発は、違法伐採材や産地偽装材の検出にも応用が可能で、違法伐採防止などに役立つばかりでなく、森林の減少・劣化の防止対策にもつながるものと期待される。

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