次世代材料「グラフェン」の生成メカニズムを解明
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は12月7日、半導体エレクトロニクス分野でポストシリコン材料の一つとして注目されている炭素原子のシート「グラフェン」を、酸化シリコン基板上に効率的に生成することを可能とするメカニズムを解明したと発表した。グラフェンデバイスの開発を促す重要な成果が得られたとしている。
 グラフェンは、鉛筆の芯にも使われる黒鉛(グラファイト)のシート状物質で、炭素原子が蜂の巣状に6角形のネットワークを組んで層を形成している。原子一層から成る究極の薄さと、そのシート上に高移動度の電子が存在することからシリコンに代わる新材料として注目され、近年、高品質、大面積のグラフェンを生成する手法の開発がいろいろ試みられている。
 そのうちの一つである剥離法は、粘着テープを用いてグラファイトからグラフェン薄膜(数層のグラフェン)を引きはがし、それを酸化シリコン基板表面に転写して単層グラフェンを基板表面上に形成するというもの。現在最も代表的なグラフェン生成法であるが、単層グラフェンが酸化シリコン表面上に生成するメカニズムは明らかでなかった。
 計算科学的手法でnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールの炭素物質の物性解明に取り組んでいる研究チームは今回、ある特定の表面構造を持つ酸化シリコン基板上では、グラフェンが非常に強く基板と相互作用をすること、また、その相互作用がグラフェン層間相互作用に比べて著しく強いことを理論的に見出した。基板とグラフェンの相互作用の方がグラフェン同士の相互作用よりも強いので、数枚のグラフェンが重なったグラフェン薄膜を基板に近づけると、一層のグラフェンが基板と相互作用して基板上に生成する。これが剥離法によるグラフェン生成メカニズムの一部をなしていると考えられるという。
 この発見は、酸化シリコン基板の表面を制御することにより、グラフェンを効率的に生成できる可能性を示すもので、高品質グラフェンの生成、大面積化の実現につながる成果としている。

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