(独)産業技術総合研究所は11月23日、生体内で遺伝情報をもとにタンパク質を合成する機能を担うリボソームが、そうした「翻訳」機能以外にRNA(リボ核酸)分解酵素であるリボヌクレアーゼの活性を阻害する機能を持つことを発見したと発表した。 リボソームは、あらゆる生物の細胞内に存在する細胞小器官で、DNA(デオキシリボ核酸)からRNAに転写された遺伝情報をタンパク質へと「翻訳」する機能を担っている。そして、細菌と人間ではリボソームの構造が異なるため、細菌リボソームに対する阻害剤は、人間に対する毒性の低い感染症治療薬となる可能性があり、その開発が期待されている。 今回の研究では、リボソームの変異体の解析(生物個体の差異を、遺伝子解析により明らかにすること)を試みた。リボソームは、リボソームRNAとリボソームタンパク質の複合体である大小2つのユニットからできている。解析の結果、相互作用や活性の阻害を決定する部位が、「リボソーム30Sサブユニット」と呼ばれる小さい方のユニットにあることや、リボヌクレアーゼT2と結合することで、細胞内の自己RNAの分解を防ぐことを発見した。 この研究で、リボソームの新たな役割を見出したことから、リボソームには他にも生理的に重要な機能が隠されている可能性のあることが判明した。研究グループは、今後もリボソームの機能について解析を継続していくと共に、毒性の低い感染症治療薬への応用の可能性についても探っていきたいとしている。 この研究成果は、11月23日発行の英国の科学専門誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communication)」のオンライン版に掲載された。
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「リボソーム30Sサブユニット」の立体構造 (提供:産業技術総合研究所) |
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