(独)物質・材料研究機構は3月10日、強磁性体だけではなく反強磁性体をはじめとした一般の磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出せる磁気印加手順を発見したと発表した。この手順を用いると、あらゆる磁性体の最大の磁気冷凍性能を把握して最大性能を引き出す条件を比較できるため、磁気冷凍に適した新規材料や、それを用いた磁気冷凍機の開発が期待できるという。
■磁気熱量効果の特質を解析
磁気冷凍は磁性体に磁場を印加し、それを変化させると温度変化が誘発される「磁気熱量効果」を用いた冷凍法。冷媒ガスをコンプレッサーで圧縮し、膨張させて冷やすこれまでの気体冷凍方式に代わる環境負荷の少ない次世代型の冷凍方式として注目されている。
その実現には、新規な磁性材料の開発とともに、高い磁気冷凍性能を引き出す方法の創出が必要とされている。
研究チームは今回、スーパーコンピューターを用いた熱統計力学シミュレーションを実施し、強磁性体や反強磁性体の示す磁気熱量効果の特質を高い精度で解析した。
その結果、磁場をある一定の値からゼロ磁場まで変化させるという、これまで磁気冷凍の研究で用いられてきた手順が、強磁性体の磁気冷凍性能を最大化する手順であることを確認した。
一方、反強磁性体については、これまでの磁場印加手順では低い磁気冷凍性能しか得られず、反強磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出すためには、磁場をゼロ磁場まで変化させずに、使用したい温度に依存した一定の有限磁場で止める必要があることが分かったという。
この手順は反強磁性体だけではなく、非強磁性的な磁気構造を示す一般の磁性体に対しても適用でき、磁気冷凍に適した材料開発の可能性を広げる成果としている。

左が従来型の地場印加手順、右が発見した地場印加手順(提供:物質・材料研究機構)