生殖細胞形成の仕組み解明―重要な分裂サイクル停止:筑波大学
(2020年3月12日発表)
筑波大学は3月12日、生殖細胞の卵子や精子が作られるときに多くの動物でそのもとになる始原生殖細胞の分裂サイクルが停止する仕組みを解明したと発表した。この仕組みを利用してショウジョウバエで人為的に分裂サイクルが停止しないようにしたところ、生殖細胞が正常に作れなくなった。今回の成果は、多くの動物に共通する同様の仕組みの意義を明らかにするのに役立つという。
筑波大学 生存ダイナミクス研究センターの森田俊平研究員(現・米国ブラウン大学博士研究員)、小林悟教授らの研究グループが明らかにした。
卵子や精子は、受精卵から作られる始原生殖細胞がDNA複製期、分裂準備期、細胞分裂期、複製準備期という4段階の細胞分裂サイクルを繰り返すことで最終的に卵子や精子となり、卵巣や精巣へ移動する。このうち、①分裂準備期から細胞分裂期へ、②複製準備期からDNA複製期への移行が一時的に抑制されることが知られているが、その仕組みや役割については十分に解明されていなかった。
今回、研究グループは、②のサイクル停止の仕組み解明に取り組んだ。その結果、形成直後の始原生殖細胞では「miR-10404」と呼ばれるマイクロRNAの合成が抑えられ、それによって細胞分裂サイクル停止の働きをする遺伝子(dap)が活性化していることを突き止めた。そこでこの仕組みを利用して始原生殖細胞の細胞分裂サイクルを強制的に開始させたところ、生殖細胞の形成が正常に進行しなくなることも見出だした。
これらの結果から、研究グループは「細胞分裂サイクルの停止が、ショウジョウバエの生殖細胞形成過程で重要な役割を果たしていることを示している」として、今後、他の動物においても同様の機構を解明するための重要な基盤になると期待している。