乾燥と過湿に同時耐性を示すササゲの祖先野生種を発見―極端な気候変動にも強い新品種の開発に道:国際農林水産業研究センターほか
(2025年6月13日発表)
(国)国際熱帯農業研究所(IITA、本部ナイジェリア)の共同研究グループは6月13日、西アフリカ乾燥サバンナ地域の重要なたんぱく質供給源であるマメ科の作物ササゲで、乾燥と過湿の両ストレスに耐性を示す祖先野生種を発見したと発表した。栽培種との交雑が可能であり、将来の極端な気候変動下でも安定生産が望める新品種の育成が期待されるという。
ササゲは現地農民の主食を補う重要な作物で、これまでは主に乾燥に強い特性が重要視されてきた。しかし、干ばつにより不安定な栽培が続く一方、近年の気候予測によると、干ばつだけではなく、豪雨による土壌の過湿ストレスも大きな生産リスクになると予想されており、幅広い土壌水分条件に対応できる品種の開発が求められている。
研究グループは、「雨量の少ない地域や多い地域に自生するササゲの祖先野生種の中には、幅広い土壌水分条件に適応可能な系統が存在するのではないか」と考え、世界最大のササゲ遺伝資源コレクションを有するIITAとともに実態を調べた。
具体的には、IITAが保有する栽培種・祖先野生種合計99系統のササゲ遺伝資源を対象に、乾燥および過湿ストレスへの耐性試験を実施した。その結果、祖先野生種9系統と栽培種1系統、計10系統が両ストレスに耐性を示すことを発見した。
特に、祖先野生種の1つは過湿条件下で根に通気組織を発達させて酸素供給能力を高め、乾燥条件下では水分輸送効率を高める構造を持つなど、土壌の水分状態に応じて柔軟に根の形態を変化させていることが分かった。
過湿条件下では根に酸素を供給する通気組織の出現率が約2倍に増加し、通気組織が形成される皮層の比率も増加。一方、乾燥条件下では皮層の割合が半分以下に減少し、水や養分の通り道である道管や師管を含む中心柱の割合が相対的に増大した。
こうした結果から、祖先野生種に見られる根の柔軟な形態変化が,土壌水分の変動に対する適応のカギであることが示唆された。
今回発見された祖先野生種は栽培種との交雑が可能であり、今後一般的な交雑育種法や遺伝解析を活用することによって、耐性能力の栽培種への導入が期待されるとしている。