[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

穀物の収量変動予測 世界の収穫面積の1/3で可能に―トウモロコシ、ダイズ含め収穫3ヶ月前に予測可能:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年1月16日発表)

(国)農業・食品産業技術総合研究機構は116日、APEC気候センターと共同で、穀物の世界的な収量変動を予測する方法を新たに開発したと発表した。これまでのコメ、コムギに加えてトウモロコシとダイズについても、世界の収穫面積の約1/3で収穫3か月前に変動を予測できるようになった。各国食糧機関向けの収量予測サービスの実現が期待されるという。

 穀物の不作やそれに伴う国際市場価格の変動は、開発途上の食糧輸入国などにとって大きなリスクであり、その対応には収量変動の予測情報の作成・提供が重要とされている。

 農研機構の前身の農業環境技術研究所は、数年前に、世界のコムギとコメの収量の対前年増減を予測する手法を開発した。しかし、この方法では、収穫3か月前にコムギとコメについて予測できる地域は世界の収穫面積の約2割に留まり、トウモロコシとダイズについては予測性能が十分でなかった。

 今回、農研機構はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)気候センターと協力し、これまでの手法を改善、トウモロコシとダイズを含む主要4穀物の収穫変動を精度良く予測できるようにした。

 主要穀物については、世界の生産地域における120kmメッシュごとの推定収量を収録した全球作物収量データベースがある。これに新しいデータを追加し更新、信頼性のより高い収量予測モデルを構築できるようにした。

 そのうえで、米国、カナダ、韓国3カ国の5気象機関が作成した気温と降水量の季節予測データ(短期気候予測データ)を活用、地域、季節別に予測精度の最も高いデータを選択的に採用する手法を導入して、作期内予測を行うようにした。

 予測性能の検証の結果、世界の収穫面積の約34割で、収穫3か月前に収量変動を予測できることが示された。予測可能地域が世界の収穫面積の約1/3に達したことにより、国別収量の変動予測が可能な国の数も増加、その数は4種の穀物全てについて世界の生産国の約1/4に達した。

 米国農務省の食糧機関などが公表している既存の農産物需要見通しは国別のデータを使用しているが、新たな方法による国別収量の変動予測はこうした既存の見通しに異常天候の影響の情報を追加するものであり、国際的な食糧機関や食糧輸入国、農産物取扱企業に有用としている。農研機構は新手法の実運用を目指して20192020年に試験運用を予定している。