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リチウム空気電池の寿命2倍に―実験ロボで新電解液開発:物質・材料研究機構ほか

(2022年3月23日発表)

 (国)物質・材料研究機構は3月23日、究極の二次電池といわれるリチウム空気電池の充放電寿命を約2倍にできる電解液を開発したと発表した。人間の100倍以上の速度で電気化学実験を進めるロボットを作製、その実験で得た大量のデータをデータ科学的手法で解析することで新電解液を実現した。実験ロボットとデータ科学を組み合わせた今回の手法は今後の次世代蓄電池開発の加速に役立つと期待している。

 リチウム空気電池は負極に金属リチウム、正極に大気中の酸素を用い、従来のリチウムイオン電池の2~5倍以上のエネルギー密度での電力貯蔵が可能と期待されている。ただその実用化には、充放電可能な回数を大幅に増加させられる新しい電解液が必要とされる。しかし電解液の開発では、検討すべき化合物の候補やその組み合わせが膨大な数に上ることがネックになっていた。

 物材研は、まず電解液の調合とその電池性能評価を、手作業による実験に比べて100倍以上のスピードでこなす自動実験ロボットを開発した。さらにその実験で得たデータを、データ科学的な手法で解析・評価する手法を確立した。そのうえで、これらの新技術を用いて約1万種類以上の電解液材料を評価、有望な材料についてリチウム空気電池の長期サイクル寿命評価試験を試みた。その結果、臭化リチウムや塩化リチウムなど5種類の化学物質で構成される添加剤を電解液に導入することで、充放電サイクル寿命を約2倍に延ばせることを明らかにした。

 今回の成果について「従来試行錯誤的に行われてきた電解液材料の開発に対して、大きなインパクトを与える」と、物材研は話しており、今後はナトリウムイオン電池やマグネシウム電池など、さまざまな蓄電池の電解材料開発に応用できると期待している。