やんばるで目撃されたシカは絶滅危惧植物を食べていた―国内外来種から自然遺産を守る制度の整備急がれる:琉球大学/沖縄美ら島財団/南西環境研究所/森林総合研究所
(2026年3月19日発表)
琉球大学、(一財)沖縄美ら島財団、(株)南西環境研究所、(国)森林総合研究所の共同研究グループは3月19日、沖縄島北部やんばる地域で目撃されたニホンジカが絶滅危惧植物を食べていたことが分かったと発表した。世界自然遺産を守るには早急な対策が求められると指摘している。
このシカは2024年10月にやんばるの世界自然遺産地域の森林で目撃された。目撃地点近くの山中で採集された糞の分析により、このシカの種はニホンジカで、遺伝的には宮城県の金華山島に由来する系統であることがわかった。沖縄島にはシカ類は生息していないので国内外来種にあたる。人為的に島に持ち込まれ、やんばるに逃げ出したか、あるいは放逐(ほうちく)されたとみられている。
研究グループは今回、系統を調べたのと同じ糞塊を用いて、糞内容物に含まれる植物の種類を分析し、このニホンジカが採食した植物の解明を試みた。分析に用いたのは、DNA配列を網羅的に解析し、混在する複数の生物種を同時に特定できるDNAメタバーコーディングと呼ばれる手法。
解析の結果、被子植物24種、シダ植物4種の計28種の植物が検出され、同定された植物の中に、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧IA類に指定されているリュウキュウホウライカズラが認められた。
リュウキュウホウライカズラは沖縄島北部、渡名喜島、沖永良部島、喜界島のみに分布する中琉球の固有種で、石灰岩上や樹上に生育し、生育地が限られている。
沖縄には大型草食獣が分布していないことから、沖縄在来植物は大型草食獣による採食圧に対する耐性を持ち合わせていないと推測されるとともに、絶滅が危惧される植物種についてはわずかな採食であっても個体群の存続に大きな影響があると考えられている。従って、見つかったニホンジカの一刻も早い防除が望まれると警鐘している。
また、国内外来種については、国外由来の外来種に比べて野外の個体に関する対策の制度が十分整備されていない。動物の飼育に関する制度も十分ではなく、逸出防止や逸出後の対応など飼育者の責任は定められていない。こうした制度の整備も必要と指摘している。



