ハチジョウノコギリクワガタが飛べなくなった進化的要因を解明―八丈島の倒木環境などが形態進化と飛翔能力消失に影響:筑波大学ほか
(2026年4月8日発表)
筑波大学と神戸大学、(国)国立環境研究所の研究チームは、伊豆諸島のハチジョウノコギリクワガタが飛翔能力を失くした要因について調べ、飛翔筋の萎縮と共に倒木などを利用する独特の生活環境によって地上歩行が高まったとの進化的可能性を発見し、4月8日に発表した。
昆虫の移動手段となる飛翔行動は、天敵から回避し、エサを獲得する他に生殖面でも欠かせない。翅(はね)を動かし、羽ばたきする筋肉の飛翔筋を維持するには大きなエネルギーコストがかかる。
これまでは飛翔できる近縁種と飛翔ができない種との比較が難しかった。
研究チームは、八丈島で飛翔しない「ハチジョウノコギリクワガタ」と、伊豆大島、利島、神津島、八丈島でそれぞれ飛翔する「ノコギリクワガタ」を採取し、飛翔に必要な翅、飛翔筋、飛行行動の違いを基に飛翔能力の直接的要因を統計的に調べた。
その結果、ハチジョウノコギリクワガタのメスでは翅の縮小が認められた。
体の大きさ、翅や足など各部位の大きさでも、翅の縮小は単なる体サイズの縮小ではなく、翅にかかるエネルギーが他の個体群より相対的に低下していると考えられる。飛翔筋はオス、メス共に顕著な萎縮が見られた。完全な飛翔こそなかったが、「翅を広げる」「羽ばたく」などの飛翔前行動が観察された。
こうしたことから、飛翔能力消失に作用した具体的な要因は「飛翔筋の萎縮」であるとした。
さらに進化的要因を「飛翔への依存の低下」と「地上歩行への依存の増大」と見て、歩行行動と歩行形質の面から検証した。メスは最も早く、かつ長距離を歩行移動し、静止する頻度も低かった。オスは個体群の間で違いがなかった。
オスは森林地表面での待ち伏せ型の配偶戦略をとっており、メスは産卵場所の探索行動が反映され、歩行能力が強化されたと見ている。
さらに全脚長に対して(地面に接する)足先長の比率は、オス、メス共に他の個体群より小さかった。倒木環境を利用するこの種の行動の好みによって進化し、促進された可能性があると見ている。

(画像提供:小森谷 泰)



