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ダンゴムシは食べた鉱物の構造を作り替えて硬い殻にしていた―生物の巧みな構造や機能にまねた新材料の開発、応用に期待:筑波大学

(2026年3月19日発表)

 ダンゴムシは石(鉱物)を食べ、体の表面の硬い構造物(背殻)を作ることが知られている。だが食べた鉱物をそのまま殻にするのではなく、体内で鉱物の物質構造を作り替えていることを、筑波大学生命環境系の興野 純(きょうの あつし)准教授の研究チームが発見し、3月19日に発表した。

 ダンゴムシの体の表面(背殻)は炭酸カルシウムでできた硬い殻があり、外敵から体を守るのに役立っている。しかし、どんな種類の鉱物が、どのようにして背殻作りに寄与しているかはわかっていなかった。

 炭酸カルシウムには、元素や化合物などが同じ化学組成でも、結晶中の原子の構造(結晶構造)が異なるものがある。カルサイト(方解石)とアラゴナイト(あられ石)の違いに見られる。

 そこで研究チームは、カルサイト、アラゴナイトと、炭酸カルシウムを含まない石英の3種を与えて約60日間飼育し、背殻の構造を電子顕微鏡や強力なX線の放射光などで詳しく調べた。

 その結果、カルサイトとアラゴナイトを食べたダンゴムシは、背殻の鉱物化が進んで分厚く発達した層状の構造を作っていた。一方で石英の場合は背殻が弱く薄い構造しかできていなかった。

 背殻には「カルサイト型アモルファス炭酸カルシウム」と呼ばれる非晶質の炭酸カルシウムが存在する。

 アルゴナイトを食べた場合でも、体の中で最終的にカルサイトへと変換されていた。つまり取り込んだ鉱物をそのまま利用するわけではなく、鉱物の構造を巧みに作り替えながら背殻を作った証拠である。

 鉱物を摂取し生物の殻や骨、歯などの硬い構造に替える制御の仕組みは生物鉱物化と呼ばれる。この生物鉱物化は、最近の生物材料科学や進化生物学などでひときわ注目を集めている。

 


ダンゴムシは食べた石をそのまま背殻にしていなかった(提供:筑波大学)