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過去2千年の間に沖縄・先島諸島で起きた巨大津波明らかに―約600年の間隔で4回発生していたことが判明:静岡大学/琉球大学/東京大学/産業技術総合研究所

(2017年12月4日発表)

 静岡大学、琉球大学、東京大学、(国)産業技術総合研究所は124日、先島(さきしま)諸島(沖縄県)で八重山地震が起きた際発生した八重山津波と同規模の巨大津波が過去2千年の間に約600年の間隔で4回起こっていたことが共同研究で分かった、と発表した。

 先島諸島は、琉球諸島のうち、南西部にある宮古島などの宮古列島、石垣島などの八重山列島の総称で、250年近く前の1771424日に石垣島近海を震源とする八重山地震と呼ばれている大地震が発生している。

 この大地震は、地震動による被害は少なかったが、最大波高が30mに達する巨大津波が先島諸島を襲って甚大な人的被害をもたらし、犠牲者は12千人に達した。石垣島では、津波前の人口約17千人の約50%が死亡・行方不明になったとされている。

 先島諸島には、過去の巨大津波で海から打ち上げられた津波石という岩礁などの塊が陸上に残っている。これまで八重山津波発生のメカニズムの研究は、主にその津波石を用いて行なわれてきたが、津波石の分布からは津波が陸に向かって遡る限界の遡上限界を決定することができない。

 一方、津波により海底や浜辺から陸上に運び込まれた砂状の堆積物のことは砂質津波堆積物と呼ばれ、遡上限界はその砂質津波堆積物の分布が分かればほぼ決められるとされている。しかし、先島諸島では、砂質津波堆積物の分布を把握できる場所がこれまで見つかっていなかった。

 研究グループは今回、砂質津波堆積物の分布を正確に把握できる場所を石垣市(石垣島)の牧場で長さ120m、深さ2mのトレンチ(調査用溝)を掘って発見。その砂質津波堆積物に含まれていた貝類の放射性炭素年代測定から堆積物が1771年の八重山津波の時のものであるほか、920620年前、1,6701,250年前、2,7001,250年前のものであることが分かり、この結果から先島諸島では過去2千年間に八重山津波とほぼ同規模の巨大津波が4回起きていたことが判明したと結論している。

 また、1771年の八重山地震は、津波の大きさに比べ地震動が小さい、いわゆる“津波地震”だったとこれまで見られてきたが、トレンチ内から地割れがいくつも発見されたことから研究陣は「激しい地震動を伴う巨大地震であったと考えられる」と定説と異なる見解を述べている。