海底にすむウミエラの進化―水深と水温が影響:琉球大学/立正大学/産業技術総合研究所
(2022年11月4日発表)
琉球大学、立正大学、(国)産業技術総合研究所を中心とする国際共同研究チームは11月4日、海底に生息する腔腸動物「ウミエラ類」の進化パターンが生息する水深と関係していることを突き止めたと発表した。他の海洋生物に隠れ家を提供するため生態学的な重要性が注目されるウミエラ類の多様性がどのように誕生したのかの解明につながると期待している。
ウミエラは海底に羽ペンを立てたような形で生息する腔腸動物で、世界中で200種以上が見つかっている。筑波大学や東京大学などのほか、マレーシアやスペインなどの研究者も参加した研究チームは、海洋無脊椎動物の多様性創出の仕組み解明に取り組む一環としてこのウミエラ類に注目。体内にある骨片の形状の多様性がどのようにして生まれたのかを詳しく解析した。
まず干潟や底引き網、スキューバ潜水によって、日本周辺の浅海域から深海域までさまざまな深さの海からウミエラ類を採取。外国産の標本も含めて、その形態を観察するとともに遺伝子を詳しく解析した。
その結果、体内にある骨片の多様化は生息している水深と関係があることがわかった。特に三翼状骨片と呼ばれる骨片は長い進化史の中でも保存され続けた特徴だったが、プレート状や滑らかな棒状、針状の骨片についてはウミエラ類が浅い海域に進出する時期に獲得したことがわかった。さらに骨片の形は周囲の海水の化学環境、特に水温と関係がある可能性が示唆されたという。
今回の成果について、研究チームは「生態系エンジニアとして、近年その重要性が認められてきた海洋無脊椎動物の多様性創出のしくみについて理解する礎になる」と話している。