前立腺がん手術の成否予測―AIで精度大幅アップ:理化学研究所ほか
(2026年1月9日発表)
(国)理化学研究所の研究チームは1月9日、前立腺がんの患者から採取した検体の病理画像で手術後の病状変化をAI(人工知能)で正確に予測する技術を開発したと発表した。検体を採取した病院の規模や地域、検体が組織の一部か全部かといった違いで術後の予測精度がばらつくというこれまでの問題点を改善した。どの病院でも同じ質の医療を実現するための基盤になると期待している。
研究チームは理研のほか日本医科大学、東北大学の研究者で構成、がんのAI予測で課題となっている「二重の壁」に取り組んだ。医療現場で用いられる病理画像が、①検体をどの施設で採取したか、②検体が手術前に採取した生検検体か、手術後に全摘した検体かによって術後の予測結果が異なるという問題だ。
新技術では、治療結果を病理画像からAIが直接予測するのではなく、途中にがんの悪性度を評価するプロセスを組み込んだのが特徴。前立腺組織を顕微鏡で検査・評価するグリーソン分類による指標で、世界中の病院で用いられている。この指標による中間評価をAIに組み込むことで、最終的に安定した予測結果が得られるようになった。
日本医科大学、愛知医科大学、順天堂大学の病院で前立腺がんの全摘手術を受けた患者の標本から得た約350万枚の画像をこのAIに学習させた。さらに手術前に患者から採取した生検検体の画像5,200万枚に全摘検体で得た特徴が各症例に何%含まれるかを定量化するなどし、前立腺特異抗原(PSA)といった血液データと合せて手術後の回復具合を予測した。
その結果、AIによる手術後の再発率の予測結果と実際の再発率の一致度が大きく向上。回復度や再発率の予測精度が大幅に向上することが分かり、臨床的な意義が高いことが裏付けられたという。
研究チームは、今回の成果について「予測の正確さだけでなく、世界基準であるグリーソンン分類と比べても高い汎用性を示した」「大量データの入手が困難な少数データ環境でも安定した予測が可能になる」と話している。

生検検体の3次元再構成データ上に、病理プロファイルの基となるAIが抽出した100種類の病理学的特徴の分布を可視化したものである。各パッチに対して全摘検体から学習した特徴表現を適用し、「どの特徴が何%含まれるか」が赤と青の色分布(赤は高リスク、青は低リスク)とその高低(リスクの値)として示されている。これにより、生検検体という小さな標本内でも、腫瘍の異質性や微小な病理的パターンが空間的にどのように存在しているかを直観的に把握でき、中間推論スコアの基盤となる特徴の空間的広がりを視覚的に理解できる。(提供:理化学研究所)



