過酷な放射線下でも動作するWi-Fiチップを開発―無線回線による遠隔操作で廃炉解体作業が可能に:東京科学大学/高エネルギー加速器研究機構
(2026年2月13日発表)
東京科学大学と高エネルギー加速器研究機構の共同研究グループは2月13日、極めて過酷な放射線環境にある原子炉内部でも無線通信が可能なWi-Fiチップを開発したと発表した。ロボットやドローンを用いて行われる廃炉作業の遠隔操作に役立ち、作業の効率化が期待されるという。
東京電力福島第一原子力発電所事故で倒壊した原発の廃炉作業では、被曝管理のため作業員の炉内への立ち入りは厳しく制限されており、作業には主としてロボットやドローンなどの遠隔操作機器が使われている。
こうした遠隔操作機器の制御あるいは通信は現在、有線LANケーブルを用いて行われており、複雑な炉内環境下でケーブルの引き回しに苦労したり、ロボットの可動が妨(さまた)げられたりしている。
このため、無線ネットワークの導入による無線での操作・作業が重要な課題とされてきたが、これまでの無線通信機器や電子部品は過酷な放射線環境に弱く、短期間で故障したり性能劣化を引き起こしたりするため、廃炉内のような高放射線下では使えなかった。
研究グループはこの問題の解決に取り組み、今回、放射線耐性を飛躍的に向上させた電子回路を考案、それを用いてWi-Fiチップを作製し、廃炉内における高い性能の無線通信を可能にした。
具体的には、放射線耐性に実績のある65nmCMOSプロセスと呼ばれる回路構成を基礎にして、放射線による劣化を極力抑えるためトランジスタの使用を大幅に絞ったり、トランジスタのサイズを大きくしたりした。
研究では受信機を作製して強力なガンマ線照射試験を実施した。その結果、これまでに報告されている数百Gy(グレイ、物理的な線量単位)程度の放射線耐性を1,000倍以上上回る500kGyという極めて高い放射線照射においても性能劣化がほとんど起こらないことを確認した。
無線通信の性能についても、500kGy照射後において正常な通信動作の維持が実証された。今回の開発により、ロボットやドローンを用いた遠隔作業の無線化が可能になり、作業の柔軟性および機動性が大きく向上、廃炉作業の効率化や信頼性向上が期待されるとしている。



