ウイルスは宿主細胞内の局所領域で自身のmRNAを翻訳―ウイルス感染における翻訳制御の理解大きく進展:京都大学/理化学研究所ほか
(2026年1月9日発表)
京都大学、(国)理化学研究所、筑波大学、ウィーン大学などの共同研究グループは1月9日、mRNAからたんぱく質を合成する翻訳システムを保持していないウイルスが、感染先の宿主の翻訳システムを細胞の一部に集積させ、その局所翻訳環境を利用することで、ウイルス遺伝子を効率的に翻訳している可能性が見出されたと発表した。
この局所翻訳は、アメーバを宿主とする巨大ウイルスの一種、ミミウイルスを用いた研究で得られた成果で、ミミウイルスだけではなく、他のウイルスにも共通する普遍的な戦略である可能性があり、ウイルス感染過程における翻訳制御の理解を大きく進展させることが期待されるとしている。
ミミウイルスをはじめとした多くのウイルスでは、遺伝子の翻訳を宿主の翻訳システムに依存している。それにもかかわらず、アミノ酸の種類を指定する3塩基の組み合わせのコドンの使用頻度が宿主のものから大きく乖離(かいり)している。
このため、研究チームはtRNAの供給とmRNAによる需要との間のミスマッチをウイルスがどのように乗り越えているのかという問題に、ミミウイルスを題材に用いて取り組んだ。
その研究の中で、ウイルス感染による細胞内tRNA組成は大きく変化しないにもかかわらず、ウイルスのmRNAは宿主のmRNAよりも高い効率で翻訳されることを見出し、その結果から、ウイルスの遺伝子を翻訳するシステムが宿主遺伝子の翻訳環境と異なる可能性に思い当たった。
そこで、高度な蛍光顕微鏡観察法を駆使して詳細に観察した結果、ウイルスのmRNA、宿主のリボソームRNA、そして新たに合成されたポリペプチド鎖が、全ウイルス工場の周辺に共局在していることを発見した。
これは、ウイルスが宿主細胞内に構築しているウイルス専用の局所環境の周辺で、翻訳が起きていることを示すもので、この局在化により、ウイルスが必要なtRNAなどの翻訳関連因子も局所的に濃縮され、ウイルス遺伝子の翻訳が効率化されている可能性が浮上した。
すなわち、ウイルスがtRNAの供給と需要のミスマッチを克服するために、ウイルス独自の翻訳の場を作る可能性が示された。
今回の研究により、ウイルスは積極的に宿主と異なるコドンを利用している可能性が見えてきた、としている。



