血糖値スパイク抑制へ―新薬開発に新しい手掛かり:北海道大学/高エネルギー加速器研究機構ほか
(2026年2月6日発表)
北海道大学と高エネルギー加速器研究機構、筑波大学の研究グループは2月6日、食後に動脈硬化や心筋梗塞の原因となる血糖値の急上昇「血糖値スパイク」の抑制に役立つ医薬品や食品の開発に新しい手掛かりを得たと発表した。体内で血糖を生み出す酵素がブタの血清中に大量に存在することを発見、その働きを阻害する仕組みを分子レベルで解明した。血糖値の上昇を抑制する薬となる化合物の探索や設計に新しい道がひらけると期待している。
体内で血糖が生成される際に働くのが、哺乳類の小腸に存在する消化酵素の一つであるマルターゼ‐グルコアミラーゼ(MGAM)。食べ過ぎた後などにはこの酵素の働きで血糖値が急上昇、血管にダメージを与える血糖値スパイクの原因になる。研究グループは今回、この酵素の働きを抑えて血糖値スパイクを抑制する拮抗阻害剤として知られる「AC5」の活動の仕組みを分子レベルで解明した。
研究では、MGAMがブタの血清中に大量に存在することを発見し、高純度・高収量で取得する方法を確立。さらに、血糖値スパイクを抑制するAC5によって消化酵素の働きが阻害するMGAM分子の立体構造を、高エネルギー加速器研究機構の特殊な顕微鏡「クライオ電子顕微鏡」で解明した。
その結果、ブタの血清から生成したMGAMとヒトのMGAMが同一の物質であることを突き止めた。両者のアミノ酸配列を比較したところ、80%の高い一致率を示したという。このためブタの血清から抽出するMGAMを、ヒトの小腸MGAMの代替酵素として利用できる可能性があると研究グループはみている。
また、2型糖尿病の予防や治療に有効とされている拮抗阻害剤「AC5」によって阻害されたマルターゼ‐グルコアミラーゼ(MGAM)分子の立体構造についても解明。どのように阻害が進むかについて詳しく解析した。その結果、このAC5によってMGAMで観察される阻害の様子が、MGAMが持つ二つの触媒ユニットによる二重の拮抗阻害によるものであることなどもわかった。
これらの成果から、研究グループは「これまで入手が困難だったMGAMの安定的な供給基盤の確立に道がひらかれた」として、食後の血糖値スパイクを抑制する医薬品や食品開発の加速につながると期待している。



