[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

大規模カルデラ噴火が日本列島で頻発した理由明らかに―世界各地の「イグニンブライト・フレアアップ」の解明へ:産業技術総合研究所ほか

(2025年9月3日発表)

 (国)産業技術総合研究所と東京大学の研究グループは9月3日、大規模なカルデラ形成噴火が頻発する「イグニンブライト・フレアアップ」と呼ばれる現象が日本列島で9,000万年前から6,000万年前に発生した要因を解明したと発表した。

 カルデラ形成噴火は、大きな円形の陥没(かんぼつ)地形を伴って多量のマグマが短時間にマグマ溜まりから流出するような噴火を指す。この噴火に伴う大規模な火砕流(かさいりゅう)によって堆積した火山灰などの粒子が自重と熱により癒着することで形成される地質体をイグニンブライトといい、多量のイグニンブライトの形成を伴う大規模カルデラ噴火の頻発がイグニンブライト・フレアアップ。

 このイグニンブライト・フレアアップは過去に世界各地の沈み込み帯で確認され、日本列島では約9,000万年前から約6,000万年前の白亜紀後期から古第三紀初頭にかけて発生したことが知られている。ただ、現在の地球上では観測されておらず、発生メカニズムには諸説あり、発生要因は明確になっていない。

 研究グループは今回、日本列島と朝鮮半島に分布する白亜紀から古第三紀にかけての火成岩に含まれるストロンチウムとネオジムの同位体組成に関するこれまでの多数の研究データを整理したり、マグマの化学組成の時間変化と当時の岩石の形成場の対応などを調べた。

 その結果、日本におけるイグニングブライト・フレアアップは、その直前に、熱いマントルが大陸プレートの下底部に流入してきたことで発生したことが示された。この熱いマントルの流入は、大陸プレートの底に広がっていた古い海洋プレートの端がマントル側にめくれるように変形する「スラブ・ロールバック」という現象の影響が日本に到達したことによって引き起こされたと考えられるという。

 以上の結果から、日本列島で白亜紀から古第三紀に発生したイグニングブライト・フレアアップは、朝鮮半島側から移動してきた熱いマントルの流入場所が日本列島の直下に到達したことで引き起こされたことが示されたとしている。