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電気自動車に使える新規磁石化合物の合成に成功―レアアースの添加なしに優れた高温特性を実現:物質・材料研究機構

(2024年5月27日発表)

 (国)物質・材料研究機構(NIMS)は5月27日、電気自動車(EV)時代の課題の一つとされている高温に耐える新規磁石化合物の合成に成功したと発表した。レアアース(希土類元素)が原料の現用の磁石よりずっと高い約500℃という高温まで磁石であることを確認した。レアアースを精製する際に生じる副産物を原料に使う。実用的な磁石の実現に向け量産プロセスの開発を進めるとしている。

 レアアースは17種類の元素の総称。その元素の一つネオジムを主成分とするネオジム磁石は、最も高い磁力を持つ永久磁石として知られ、小型化できることから様々な分野に使われている。身近なのがスマートフォン。ほとんどのスマホにネオジム磁石が使われている。

 しかし、ネオジム磁石は高温に弱い。今後大きな磁石の新規市場になると見られるEVモーター駆動用磁石には耐熱性の点でネオジム磁石はそのままでは使えず、現在のEVは多くがレアアースの一種ジスプロシウムを原料に加え温度特性を上げた磁石にして駆動モーターに耐えられるようにしている。

 しかし、ジスプロシウムは資源的に多くなく安定調達に心配があり、年間200万台のEVを生産するにはおよそ240tのジスプロシウムが必要になるといった推測も出ている。こうしたことからジスプロシウムを用いない高温に耐えられる新磁石の開発が求められている。

 磁石は、ある温度を超すと磁力を失う。その磁力を失う温度のことを「キュリー温度」と呼ぶ。

 研究グループは今回、レアアースの精製過程で生じる副産物のサマリウムと鉄、窒素からなる新規磁石化合物の単結晶薄膜をコーティング技術の一つ「スパッタ法」によって形成することに成功し、絶対温度で770K(ケルビン、273Kが0℃)という高いキュリー温度を記録した。

 ネオジム磁石が磁力を失うキュリー温度は、300℃前後とされているので、今回記録したキュリー温度770Kはそれよりずっと高い約500℃ということになる。

 磁気物性値も優れ、実験では室温で異方性磁界約22万ガウス、飽和磁化1.64万ガウスを計測し、世界最強の磁石材料のネオジム磁石を凌いでいる。