漫画教材を使った糖尿病教育は子どもの知識と運動量を増やす―心理面で講義より漫画に満足感:筑波大学
(2025年10月20日発表)
子どもの糖尿病教育に漫画教材を使うことで効果があったと、筑波大学システム情報系の鈴木 健嗣 教授の研究チームが10月20日に発表した。糖尿病の知識が増え、歩数や運動量が増加したばかりか、子どものやる気や楽しさを引き出す心理面での効果もあった。
漫画はいまや哲学、歴史から科学技術、実用面など幅広い分野の入門ガイドとしても広く活用されている。特に子どもにとっては親しみやすい特長がある。
インスリンを作る膵臓(すいぞう)の細胞が壊れて発症する1型糖尿病は子供に多く、世界的にも増加している。インスリン注射や食事管理面での正しい知識が不足し、誤解されることも多い。
そこで同大の医学系と芸術系の教員が共同で漫画教材作りに取り組み、遊びやゲーム感覚で学べるように工夫した。
茨城県在住の8歳から15歳の子ども30人を募集。「漫画を読む」グループと「講義を受ける」グループとに分け、糖尿病の知識や理解のテストを実施し、日常の活動量(加速度計を2週間装着)を計った。
「漫画」と「講義」による教育はそれぞれ別に実施し、6か月後に再び知識テストと活動量の測定をした。その結果、知識では「漫画」グループは24%上昇し、「講義」グループは22%上昇していた。
身体活動は双方ともに1日の歩数が約1,400歩増加し、教育による効果として体を動かすきっかけ作りが認められた。心理的面では、「講義」グループより「漫画」グループの影響が大きく、教育を受けた直後に満足感を感じていることがはっきり現れた。
漫画を楽しく読めた子供ほど歩数が増える傾向にあり、逆に「怖い」とか「悲しい」と感じた場合には知識や運動の伸びが小さくなる傾向があった。講義グループでは気持ちの変化と行動変容との関連は見られなかった。
「漫画」は「楽しさ」「満足度」「怖さ」などの心理的印象が、その後の知識習得や運動習慣と関連していた。これは「講義」による教育では認められず、教育効果が発揮されるメカニズムが異なっていた。
漫画による教育は子どもが楽しみながら知識を身につけ、自然に体を動かす行動につながる強みがあり、今後の教材開発の大きなヒントが得られた。
糖尿病にとどまらず、肥満や生活習慣病の予防、メンタルヘルス教育などでも漫画教育の効果があると期待される。


