[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

ウナギは陸に上がり獲物を捕食することが判明―野外調査と行動実験の双方で確認:東京大学/国立環境研究所ほか

(2025年10月17日発表)

 東京大学と(国)国立環境研究所などの共同研究グループは10月17日、ウナギは水中から陸上に出て獲物を捕食することが、野外調査と行動実験の双方で確認されたと発表した。ウナギが環境条件に応じて、水陸の境界を越えて柔軟に餌資源を利用する戦略を持つことが明らかになったとしている。

 研究グループは近年、河川上流域のニホンウナギが、ゴキブリやムカデなどの陸上起源の生物を捕食している実態を捉えてきたが、ウナギが餌生物をどのように捕えて食しているのかは不明であった。

 今回研究グループは、奄美大島の小河川からオオウナギを採集し、水場と陸場を設けた実験水槽内にオオウナギ10個体を放って摂餌(せつじ)を観察した。

 その結果、全個体が水場から陸場に上陸し、陸上餌のコオロギを自発的に捕食する様子が観察された。実験は各個体あたり191~238時間実施し、観察期間中に計3,713回の上陸行動を観察、うち42回で陸上捕食が見られた。その大半は照明を消した暗い時間帯に行われた。

 さらに、奄美大島の3河川において、57個体のオオウナギの胃内容物を調査分析した。その結果、河川上流域に生息する個体では、カブトムシやトカゲなどの陸上餌の割合が高く、河口から内陸への距離とともに、陸上餌の依存度が高まることが統計的に示された。

 これらの結果から、上流域のように水生餌が乏しい環境では、ウナギにとって陸上捕食能力が生態的適応として重要である可能性が示唆されたとしている。また、このような行動は、魚類から四足動物への進化過程や、水域から陸域への移行における摂餌戦略の多様性を理解する上で重要な知見としている。