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海洋の熱波が東アジアの地上の熱波を増幅させた―2023年の猛暑を約20%から50%も押し上げ:筑波大学ほか

(2025年9月2日発表)

 今年2025年の夏は異常な暑さが続いているが、2023年夏も東アジアは記録的な高温多湿の気候に見舞われた。その原因として、周辺の海水温が異常に高く続く「海洋熱波」の影響を受けていたことを筑波大学生命環境系の岡島 悟 准教授らの研究グループが見つけ、9月2日に発表した。気象モデルを使った数値シミュレーションで明らかにした。東京大学先端科学技術センターの小坂 優 准教授、(国)海洋研究開発機構の伊東 瑠衣 特任研究員らとの共同研究の成果。                                                     

 海洋熱波とは、数日以上にわたって特定の海域の海水温が高くなる現象をいう。サンゴの白化や漁業資源の減少、特定の生物種の大量死など海洋生態系に深刻な影響を引き起こすと見られる。

 研究グループはこれまでに、数値シミュレーションを使って中緯度海域と大気の関係を調べ、海洋が大気に積極的に働きかけ、影響を与えていたことを明らかにしてきた。

 数値シミュレーションとは、気象現象を数理モデルで表現しコンピューターで再現・予測する手法をいう。

 今回は「高温と多湿」の複合に着目し、2023年夏の東アジアの海洋熱波が大気に与えた影響を調べた。その結果、地球規模の大気循環の影響に加え、海洋熱波が猛暑を約20%から50%も押し上げていたことが明らかになった。

 海洋熱波は「高温と多湿の複合的な極端気象」として地上の熱波を強めていたことも分かった。

 中緯度の海洋環境が大気に大きく影響を与え、暮らしにも影響している。このことから地上の熱波と海洋熱波を全体的に、網羅的に取り扱う必要があるとしている。