ジャガイモの世界的害虫を駆除する新物質を発見―化学構造が単純で、大量合成が可能:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2025年10月21日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と日本曹達(株)、北海道大学は共同で10月21日、ジャガイモの世界的重要害虫とされている「ジャガイモシロシストセンチュウ」(略称Gp)を駆除する新物質を発見したと発表した。畑への投与で土壌に含まれているGpを大幅に低減することに成功した。大量合成が可能で、Gpを餓死させる新たな防除法になることが期待される。
Gpは、ジャガイモの栽培に深刻な影響を及ぼす土壌伝染性の病害虫として知られ、全世界的に発生している。日本で初めて確認されたのは、2015年のこと。
Gpの卵は、植物の根から分泌される「ふ化促進物質」と呼ばれる特殊な物質に触れると反応してふ化(卵からかえること)が起こり、ふ化したGpの幼虫は植物に寄生できないと数週間で寄生活性を失いやがて死滅する。その特性を利用して寄生植物が存在しない状況でふ化を誘導するようにすればGpを減らすことが原理的に可能で、以前からGp防除法の開発は試みられてきた。
しかし、これまでに見つかっているふ化促進物質は、化学構造が極めて複雑なため合成が難しくまだ実用化にまで至っていない。
そこで、研究グループは、大量合成が可能な単純構造のふ化促進物質の開発を目指した。
研究では、東京大学創薬機構が所有する化合物ライブラリーに所蔵される9,600種に及ぶ化合物についてそれぞれのGpに対するふ化促進活性を評価することを行なった。
その結果、市販の化合物から数工程で合成することが可能な化学構造が単純で、大量生産できるふ化促進物質群を発見した。
さらに、見つけた化合物群の中でもふ化促進活性が高く、化学構造から低コストでの合成が可能と見られる「5,5-ジメチル-4-(p-トリル)ピロリジン-2-オン」を合成してGpが発生している畑に投与し、その効果を評価した所、Gp密度を83~95%減少させることができた。
Gpは、世界各地で問題になっていることから、様々な土壌条件や気象条件下での効果の検証、自然生態系への影響評価などを進めて実用的な技術にしていきたいといっている。



