植物が肥大成長を始める仕組みを解明―幹細胞を活性化させるスイッチを発見:大阪大学/東京大学/神戸大学/名古屋大学/理化学研究所ほか
(2025年8月4日発表)
大阪大学をはじめとする東京大学、神戸大学、名古屋大学、(国)理化学研究所などの共同研究グループは8月4日、植物の根が太くなり始める前に、その原動力となる幹細胞が活性化されるプロセスを解明したと発表した。
樹木を中心とした多くの植物は、最初に縦方向に根や茎を伸ばし、続いてそれらを太く横方向に肥大成長させることで、安定した体の構造を作りあげている。植物の体を作るこの肥大成長は、原動力となる幹細胞が分裂を繰り返すことで進むことが知られている。
具体的には、形成層幹細胞と呼ばれる幹細胞が活発に分裂し、自らを維持しながら、水を運ぶ管を構成する木部細胞と、栄養分を運ぶ管を構成する篩部(しぶ)細胞という2種類の細胞を生み出すことで肥大成長の原動力となっている。
しかし、どのように肥大成長が開始されるのか、その出発点は分かっていなかった。
研究グループは先に、モデル植物の細胞を人工的に形成層幹細胞に作り変える培養系を開発し、この問題の解明、すなわち植物が肥大成長を開始するプロセスの解明問題に取り組んできた。
今回はこれまでの解析を踏まえ、形成層幹細胞が活動を開始するまでの過程を細胞レベルで高精度に調べた。その結果、形成層幹細胞が培養系で作り出される直前の段階において、サイトカイニンと呼ばれる植物ホルモンへの応答が一時的に強くなることを見出した。
そこで、サイトカイニン応答の様子を発光イメージングという手法で可視化し、実際の根で調べたところ、肥大成長が始まる直前に短時間のサイトカイニン応答のピークが現れることを確認、この短時間のホルモン応答のピークこそが形成層幹細胞の活動を開始させ、植物の肥大成長を始動させるスイッチとして働いていることを突き止めた。
植物の肥大成長では、木材資源となる木部組織や、有用な化学成分を蓄える柔組織が生み出される。今回の研究成果は、こうした肥大成長が始まるきっかけとなる仕組みを明らかにしたもので、木材生産の効率化や有用物質を蓄える植物の開発、さらにはCO2吸収量の多い植物の育種など、様々な応用が期待されるとしている。