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ヤムイモのゲノム解読―西アフリカの食料問題に貢献も:岩手生物工学研究センター/国際農林水産業研究センター

(2017年9月13日発表)

 (公財)岩手生物工学研究センター(IBRC)と(国)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は913日、西アフリカで主食用に栽培されているヤムイモの一種「ギニアヤム」の全遺伝情報(ゲノム)を解読したと発表した。開花後にしか雌雄が判別できないヤムイモは品種改良が難しかったが、早期に性別を決める技術も開発、品種改良の高効率化に道をひらいた。ヤムイモの生産性や栄養価の改良を飛躍的に加速できると期待している。

 両センターが英国アーラム研究所、神戸大学など国内外の9つの大学・研究所の協力を得て、ナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)と国際共同研究を進めた。ヤムイモはナガイモや自然薯(じねんじょ)の仲間。今回はその一種で、西アフリカで主要作物として栽培されているギニアヤムのゲノム解読に取り組んだ。

 生物の遺伝情報は4種類の化学物質「塩基」が2個一組の対となった文字で書き込まれているが、解読したのは59,400万塩基対の配列。ギニアヤムの遺伝情報のほぼ全てをカバーしているという。この配列の中には、ギニアヤムの生命活動に必要なたんぱく質を作る遺伝子26,198個分の配列が含まれていた。また、3種のモデル植物(イネ、シロイヌナズナ、ミナトカモジグサ)と比較したところ、このうち5,557個の遺伝子が共通の祖先を持ち、よく似ていることがわかった。

 さらに研究チームは、雌雄に分離した後のギニアヤムについてゲノムの塩基配列を比較、その違いから雌雄の決定に関係する遺伝子領域を突き止めた。そこで同領域を詳しく分析し、開花前の幼植物期のギニアヤムでも雌雄を区別できる技術「DNAマーカー」を開発することに成功した。

 研究チームは「DNAマーカーを用いることで、幼植物期に雄か雌かを推定できるようになる」として、今後、生産性や栄養価の高いギニアヤムの新品種を効率よく開発できるようになるとしている。