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基腐病(もとぐされびょう)に強いサツマイモの新品種を開発―焼酎醸造にとって朗報、春から種イモの生産始まる:農業・食品産業技術総合研究機構

(2022年6月22日発表)

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「みちしずく」の塊根(かいこん) (提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月22日、畑のサツマイモが腐ってしまう病気として恐れられている基腐病(もとぐされびょう)に強いサツマイモの新品種を開発したと発表した。名称は「みちしずく」。現在、焼酎醸造用として普及している最も代表的なサツマイモ品種の「コガネセンガン」より基腐病にかかり難い。すでに今年の春から鹿児島県、宮崎県で種イモの生産が始まっているという。

 現在、日本で最も多く栽培されているサツマイモは、主に焼酎の原料として使われている九州農業試験場(農研機構九州沖縄農業研究センターの前身)が1966年に開発した品種の「コガネセンガン」。焼酎造りの盛んな南九州では栽培されているサツマイモの5割以上がこの品種で占められている。

 だが、この”人気“品種は、基腐病に弱いという大きな弱点を抱えている。

 その難病は、約100年前にアメリカで見つかったもので「ディアポルテ・デストルエンス」という糸状菌(かび)に感染すると起こり、サツマイモの茎や葉が枯れるためにイモが腐ってしまい、日本では2018年に初めて発生が見つかっている。

 それが、現在ではサツマイモの主要生産地である南九州や沖縄県で多発するようになって「コガネセンガン」の著しい収量低下が生じ、焼酎メーカーの原料不足が深刻な問題になっている。

 新品種「みちしずく」は、「こないしん」と呼ばれるデンプン製造用のサツマイモを母に「九系09187-14」を父とする交配によって作った。

 「みちしずく」の名は、新たな道を切り拓くことを願って付けたといい、「コガネセンガン」よりサツマイモ基腐病に強く多収で、類似の香りと味を持った焼酎が得られることを確認している。

 農研機構では「2023年に130ha(ヘクタール)、2024年には1,000haの栽培を見込んでいる」と展望、「2026年には2,000ha以上の普及を目指している」とするビジョンを描いている。