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絶滅危惧種を守る森林の減少―焼き畑が最大の要因:国立環境研究所

(2022年5月13日発表)

 (国)国立環境研究所は5月13日、絶滅危惧種の生息地である森林が減少する最大の要因は焼き畑などの移動農業だとする分析結果を発表した。森林を主な生息地とする6,164種の動物の分布域を対象に、森林減少が起きる要因を地球規模で分析して突き止めた。地域の食糧生産を担う移動農業も適切に管理すれば生物多様性の維持・回復は可能だとして、利用と保全の調和が不可欠と指摘している。

 研究チームが分析の対象にしたのは、森林に生息する6,164種(ほ乳類1,227種、鳥類1,855種、は虫類881種、両生類2,201種)の絶滅危惧種の分布情報と、5つの主な森林かく乱要因(商業的な生産による開発、焼き畑を含む移動農業、林業、火災、都市化)の関係。地球全体にわたって両者のデータを重ね合わせて分析し、森林かく乱要因が絶滅危惧種に与えている影響を評価した。

 その結果、世界全体では減少している森林の割合は42%だったのに対し、絶滅危惧種の分布域に限ると森林の73%が減少していた。また、北半球の中緯度以北での森林減少には林業の影響が大きかったが、低緯度・熱帯地域では焼き畑を含む移動農業による影響が大きかった。さらに、移動農業の割合は世界全体では14%だったのに対し、絶滅危惧種の分布域では49%と非常に高く、森林減少の最大の要因になっていることなどが分かった。

 研究チームは「保全を最優先として土地利用を管理する従来型の保護区に加えて、人の利用を前提として保全を進める新しい仕組みを活用して、利用と保全が調和した対策を進めることが不可欠」と指摘している。