固有種ミヤコサワガニの絶滅危機、遺伝子解析で明確に―湿地が分断され、隔絶化する生息地:兵庫県立大学/兵庫県立人と自然の博物館/産業技術総合研究所ほか
(2026年5月14日発表)
兵庫県立大学兼兵庫県立人と自然の博物館の頼末 武史(よりすえ たけふみ)准教授、産業技術総合研究所ネイチャーポジティブ技術実装研究センターの井口 亮(いぐち あきら)研究チーム長、沖縄県立芸術大学の藤田 喜久(ふじた よしひさ)教授らの研究グループは、沖縄県・宮古島だけに生息する固有種で県の天然記念物である「ミヤコサワガニ」が、生息域周辺の環境劣化で種の維持が厳しくなっていることを最新の遺伝子解析手法によって明らかにしたと発表した。
宮古島のある琉球列島は200以上の島から構成され、孤立した島に生き残ったイリオモテヤマネコやヤンバルクイナなど固有生物種が多い。淡水に棲むサワガニの仲間も地域の固有種が25種を数え、その一つがミヤコサワガニである。
宮古島は海底のサンゴ礁が堆積した石灰岩が隆起して形成された。海面下にあった島なのに、淡水だけに生き、脚で歩いてしか移動できないサワガニがなぜ棲むようになったか。2001年に新種が発見された際は生物界に大きな驚きが広がったという。
宮古島のわずか3地域の湧水地周辺にだけに生息する希少種である。環境省や県は絶滅危惧種に指定し、「種の保存法」に基づき、捕獲や採集を規制しているが、互いに5km程度離れた範囲内にあるものの、道路網の発達や農地造成によって、本来連続していた湿地の環境が分断されてしまっている。
研究グループはこの3生息地のミヤコサワガニの存続可能性について調査。3生息地から各20匹ほどの脚の一部のDNAサンプルを採取し、生息地別に祖先集団から受け継いだ遺伝的な違いや近親交配の進行などを調べた。
その結果、3生息地の個体群に遺伝的な特徴が異なる「遺伝的分化」が確認され、交配が隔絶していることが示唆された。中でも面積が約80㎡と極めて狭い生息地では近親交配の進行によって遺伝的多様性が大きく低下し、今後、何らかの環境変動に対して適応能力が減退し、絶滅するリスクが高いことが裏づけられた。
ミヤコサワガニの種の危急(ききゅう)さを示す知見を得たことから、保全対策としては捕食者となる外来動物(ミナミイシガメ)の駆除活動や自治体による買い上げだけでなく、生息場所の消滅を防ぐために法的に土地利用を制限するなど、より積極的な政策が必要だと指摘している。
サワガニが棲み、生き延びてきた要因に謎を残す宮古島。石灰岩の土地のために地下からの湧水地が多い特異性もある。数十万年前より古くは、大きな島であって他島とつながり、サワガニが陸上移動したとの推論もある。ミヤコサワガニの存在は、島の成り立ちや自然史を知る貴重な「生き証人」であり、謎解きの鍵だと研究グループは語っている。




