最適な医療・介護へ―新規要介護者を5分類:筑波大学
(2025年5月8日発表)
筑波大学は5月8日、新たに介護が必要な高齢者を5つのタイプに分類することが、その後に必要な介護の判断に役立つと発表した。介護保険サービスを利用し始めた65歳以上の人の介護認定調査の結果とその後の変化を分析、認定後にどんな医療・介護サービスが必要になるかを明らかにした。介護現場で高齢者本人や家族、介護者や医師がどのような医療介護サービスが必要かを話し合うのに役立つという。
介護を必要とする高齢者は複数の障害を抱えていることが多く、その組み合わせも多様だ。そこで筑波大学の田宮 菜奈子 教授らは、あらかじめ高齢者の複合的な心身機能の状態を把握する必要があると判断。茨城県つくば市で2014年10月から2019年3月にかけて新たに介護保険サービスを利用し始めた65歳以上の要介護認定者3,841人を対象に、介護認定書に記された情報を機械学習の手法を用いて詳しく分析した。
その結果、要介護認定者は軽度身体タイプ(1,258人)、軽度認知タイプ(946人)、中等度身体タイプ(767人)、中等度複合タイプ(597人)、重度複合タイプ(273人)の5グループに分類できることがわかった。千葉県柏市のデータでも同様の分類ができることが確認できた。
そこでさらに、これら各タイプの高齢者が介護開始後にどのように変化したかを分析したところ、重度複合タイプはその後に死亡したり入院や介護施設に入所したりするリスクが高いことがわかった。また、中等度身体タイプは入院の、中等度複合タイプは介護度悪化のリスクが高い一方、軽度認知タイプは軽度身体タイプに比べて死亡や入院のリスクが低いことなどが明らかになった。
このため研究グループは、今回の成果について「介護の現場において、本人や家族、ケアマネージャー、主治医などの関係者が、利用する医療介護サービスの選択や将来に向けた準備について話し合う際に役立てられる」とみている。同時に「今後は日本の他の地域でも同様の解析を実施し、最適な医療・介護サービスの在り方について研究を進めることが必要」と話している。