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朝・昼食後のウーロン茶で、睡眠中の脂肪が燃焼される―エネルギー代謝の調査には、睡眠を含めた長時間の測定が必要:筑波大学

(2020年12月23日発表)

 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の徳山薫平(とくやま くんぺい)教授らは、ウーロン茶やカフェインを朝食と昼食時に小型缶1本分を習慣的に飲み続けたところ、体内の脂肪燃焼が促進される効果があったと12月23日に発表した。中でもウーロン茶の脂肪燃焼効果は睡眠時に大きい効果が認められた。

 ウーロン茶にはカテキン類の分子が幾重にも化学的に結合した重合ポリフェノールが多く含まれている。ポリフェノールが脂肪を吸収する酵素の働きを抑えることは以前から知られていた。

 これまでの研究の多くは1回のウーロン茶の飲用や1日の摂取による急性効果の報告が多かった。徳山教授らは12人の健康な男性に2週間、食事とともに飲み続けてもらい、専用の密閉型測定室(ヒューマン・カロリメーター)で体内のエネルギー消費量の変化を、睡眠時も含めて長時間、正確に測定した。

 睡眠の測定には、頭に脳波測定電極を着け、ネットで被せて固定することで、寝付きの良さや深い睡眠量、レム睡眠など睡眠の質と量を詳しく調べ、睡眠と脂肪燃焼との関連を探った。

 使った飲料は、市販の「ウーロン茶」(350ml、カフェイン、重合ポリフェノールなど入り)と、「カフェイン飲料」(カフェイン51.8mg)、プラセボ飲料(有効成分の含まれていないもの)の3種類。同じデザインのアルミ缶に充填し、二重盲検法による比較試験で、12人の被検者には何を飲んでいるか分からないようにした。

 その結果、1日のエネルギー消費量については、ウーロン茶とカフェイン飲料ともにプラセボとの差はなかったが、1日の脂肪酸化量は増大した。特に脂肪燃焼を促す効果はウーロン茶のほうがカフェイン飲料より大きく、睡眠中の効果が顕著だった。

 このことは、さまざまな食品素材がエネルギー代謝に与える効果を正確に調べるためには、睡眠時を含めた長時間の測定が重要であることを示している。また体温についてはウーロン茶、カフェイン飲料共に飲んだ直後に一時上昇したものの、睡眠時にはプラセボとの差はなく落ち着いた。

 厚生労働省の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男性の3人に1人、女性の5人に1人が肥満であり、また5人に1人が何らかの睡眠障害を抱えているとのデータがある。

 睡眠不足は体重の増加と関係しており、睡眠時間の短い人は体重が重くなる傾向がある。睡眠とエネルギー代謝の働きには同じ調節因子が働いていることから、エネルギー代謝と食品素材の関連を調べるには「睡眠」の影響をしっかり考慮する必要があるとしている。